深愛
「ごめんなさい」
彼は一言謝って、私の服を脱がして私を生まれたままの姿にした。
性行為なんて初めてするから緊張は隠せないけど、でも不思議と抵抗はなかった。
好きな人とするからかもしれない。
だけど彼は私が自分に好意を持っていることなんて全然気づいていなくて。
だから彼は私の身体を硝子細工を扱うように触れてくる。
彼の唇が私の肌に触れて赤い跡がついていく。
この印は私が彼のものだと言える証拠だ。
私が痛まない程度に彼が乳房を揉み上げる。
一見慣れたように動作していくけれど時折違和感を感じたから実は彼も初めてなのかもしれないと思った。
ずっと一人の人間を復讐するためだけに生きてきたから恋なんてしている暇はなかったのだろう。
この復讐の結末がどこか予想出来ていて、この人はきっと復讐が果たせば死ぬのだろうと思う。
でも私の存在が彼に少しでも生きようとすることに目を向けてくれるならこの身体をいくらでも傷つけてくれてかまわない。
そう口に出せば、彼にまた新しい重荷を与えそうだから心の中に留まらせておく。
乳房の突起に彼の舌が触れて私の肩が震える。
その愛撫はまるで母親の母乳を求める赤子のようで愛しかった。
足が開かれて露わになった秘部に彼の指が触れる。
「…痛くないですか?」
「……大丈夫です」
自分でも触れたことがない体の部位に他人が触れている。
しかも好きな人が。
それだけでじんと身体が熱くなって、秘部のひだもひくりと動いた。
「…あっ…んっ…」
彼の指が秘部の中で蠢いている。
小さく声を上げれば彼が口づけてきて、また秘部がじんと熱を持つ。
指が生む律動が激しくなっていくと私の喘ぎの声量も増していく。
液音も部屋に響き渡って耳を塞ぎたくなった。
それだけでも恥ずかしいというのに彼は秘部に唇を寄せて、そこに舌を這わせた。
「やっ…そんなとこ…っ…あ…」
「ほんとはじっくりしたいんですけど…僕も余裕ないみたいなんです」
秘部の筋に何度も彼の舌が這う。
とろりとろりと愛液が秘部から溢れ出ていくのを感じた。
だけど彼はその愛液を抵抗せず飲んでいく。
「ふ、あ…あっ…あ…」
もう限界がきそうになったとき、彼の舌は秘部から離れていってしまった。
視界が涙でぼやけていたけれどぼんやりと見えたのは男性特有のモノで、それが秘部に触れていることだった。
「…痛いでしょうから。しっかり僕の手を握っていてください」
伸ばされた彼の手を私は言われた通りに握る。
彼はそれを確認すると自身を私の中へと入れ込んでくる。
それから与えられる痛みは予想以上のもので、彼の手を握る自分の手に力が自然と入る。
彼も彼で私の中の狭さに苦痛を感じているようだった。
「……っ…すいません、動いてもいいですか?」
「ど、うぞ…っ…」
余裕がないまま、彼は腰を前に突いてきた。
その反動でぎちぎちと窮屈そうに入り込んでいた自身が更に奥へ進む。
「あ、ああ…っ…」
「し、おりさん…」
痛みに耐えられなくて声を出すと彼が私の頬を優しく撫でてくれた。
そして口づけてきて、私の呼吸が整いだすと私の口内に舌を入れて私の舌を捕らえる。
その間もゆっくりと律動は繰り返されていた。
「…んっ…」
彼のモノが私の体内の奥まで突き上げてきた。
まだ痛みはあったけれどキスのおかげだろうか、段々と和らいできた。
彼は唇を解放すると秘部の蕾にそっと触れた。
「あ、だめっ…そこは…あ、ああ…っ…」
「…気持ち、良いんですね?」
その与えられた感覚が気持ち良いものなのかどうなのかわからないけれど、
それで痛みがまた和らいだということはきっと気持ち良いのだろう。
このまま体内に入り込んだ彼自身が溶け込んで、ひとつになって、彼を縛りつけられたらいいのに。
「も、う…あ、あ…あっ…」
「…限界、ですか?」
私がこくこくと頷くと彼は苦笑して律動を速めた。
「あ、あ…っ…な、るせ…さんっ…」
「とも、お…でいいですよ…」
「友雄、さん…っ…わた、し…あ、ああ…」
「僕も、です…一緒に、イキましょうか」
「は、い…っ…」
速められた律動の中で秘部の最奥を自身が突いた瞬間、私と彼は同時に達した。
体内に熱い何かが注がれて、私はその熱を感じながら意識を飛ばした。
行為後から起きた後、隣を見ると彼はそこにいなかった。
夢だったのだろうか、と一瞬思ったのだけれど自分の身体が何も着ていないことから今ここにいるのは現実だと理解した。
ベッドの横のテーブルの上には私の衣服が綺麗にたたんで置いてあった。
それを取ろうとベッドから抜けようとすると腰がずきりと痛むことを感じた。
―ああ、夢じゃなかったんだ。
なんとか立ち上がろうとすると自分の肩に誰かの手が触れた。
「駄目ですよ。まだ痛いでしょうから今日は一日そこにいてください」
「成瀬、さん…」
これも夢なのだろうかと自分の頬をつねってみれば痛みを感じたからこれも現実なんだと確信した。
「……これが終わったら、もう会えなくなると思ってました」
私がそう言うと彼は苦笑してベッドの上に腰を下ろした。
おそるおそる顔を上げて彼の顔を見れば、そこには思わず赤面してしまうほどの彼の笑顔があった。
彼の手が伸びてきて私の頬を撫でる。
「僕も会わないつもりでした。でも…やっぱり無理でしたね。そう簡単に感情というものは抑えられるものじゃないですね」
「……成瀬さん」
彼は真剣な表情を浮かべて私の目を見て口を開いた。
「……しおりさん。僕はあなたのことが好きです」
私はあなたの生きる理由になればそれでよかった。
でも心のどこかであなたの心が欲しかった。
その願いが今、叶って…涙が止まらない。
私もあなたが好きです、とただ言えばいいのに嗚咽が止まらなくて言えなかった。
そんな私を彼は抱きしめて、背中を優しく擦ってくれた。
私は幸せいっぱいで気づいていなかった。
私の手に手錠がかけられていたことに。
「しおりさん、あなたが何度目を覚ましても僕はあなたの傍にいますから」
私と彼はどこかにお互いを閉じ込めなければ愛し合えない。
だから私は自らトンネルに入り込む。
暗いトンネルの中での唯一の光は私が彼のものであるというこの手錠だけ。
闇でも光でもどっちでもよかった。
彼と一緒にいられるなら。
この手錠がある限り、彼は私の前から消えたりはしない。
そう安心した私は再び眠りに入ったのだった。