恋は戦争



振り向け。
振り向け。

「なにやってんだよ、智」
「うっせ、今話かけんな」

マジックならいくらでもネタは出てくるし、思い通りになる。
でも恋というやつはそうはいかない。

優と一緒に本を読んで勉強したって有言実行に出来るわけもなく。

この際、願掛けでもなんでもいいから彼女がこっちを見てくれるというならなんでもいい。


「…話かけりゃいいじゃねぇか」
「それじゃ意味ねぇんだよ」


よくある話、

視線を感じただけでそれが誰のものかわかってしまう。
視線を送っただけで思わず振り向いてしまう。

そんな運命ってやつを感じるものが欲しいんだ、俺は。

たとえ女々しいと言われても仕方がないことはわかっている。
でもそれくらい自信が欲しいんだよ。



「千里、見てるよ」
「わかってる」

彼がずっと何かを願いながらあたしを見ている。
何を願っているのかわかっているけれど。

でもあたしは視線に気づいていても振り向きはしなかった。

「なんか可愛いからまだあのままにしておく」
「うわ、意外とエスですねぇ…お母さん」

「風。間違えてる」
「ああ、あいつは違うか」

「そうよ」

あたしは彼の方へ振り向いた。
彼は目を大きく見開いて驚いている。

そんな彼を見てあたしは笑う。



「智はあたしの恋人だよ」