まさか。まさか。こんなかたちで。
初夜を迎えるなんて思わなかった。
好きな人だけど最低な人。
悪いけど好きだからって何しても許す女じゃないの、私。
今、私の体内に無断で侵入したこの男を殴りたい。
平手打ち?そんなのじゃ甘いわ。
グーよ。グーでその面殴ってやる。
全て終わったらそうしようと私は決意した。
デッド オア アライブ
「吉田さん、良い眼だね」
「今すぐにでも俺を殺したいって眼、惚れそう」
「殺さないわ」
「好きだから?」
そう言って黒崎はくすりと馬鹿にしたように私を笑う。
馬鹿なのはあなたよ。
殺すなんて甘いの。
「そう、好きだからよ」
私は笑って、下半身に力を入れた。
黒崎は私を睨んで、苦渋の表情を浮かべる。
「…っ…吉田…お前、意外とSだな…っ…」
そうよ。
あなたの前だけは汚い欲望ばかり抱いた黒い私が目覚めるの。
「…どっ…かの、大家さ、んの…おかげ…よっ…」
激しい律動が繰り返される、私たちは睨みあったまま。
黒崎は笑い続ける。最高だと。
私はそんな彼に人生で一生使わないと思った大暴言の羅列を叫ぶ。
あいつはその言葉たちを聞いて嬉しそうに笑う。
無理矢理こじ開けた私の体内の入り口に手を伸ばす。
溢れ出す純血だった醜い血を指に絡めてあいつはそれを舐める。
そして舐めた指先を私の口内へ入れ込む。
何も喋れなくなった途端、黒崎の携帯が鳴った。
行為中なのにあの男は電話を取って、堂々と仕事話を目の前でし始める。
「…ええ…それではまた後日…はい…どうも…」
話中にもあいつは腰を動かすことを止めない。
私は口内にある彼の指を噛み切りたくてしょうがなかった。
…そういうこと。
急に黒崎が私に手を出したりするから不思議に思った。
今回の相手はアカサギ、つまり女なのだろう。
アカサギは色気を主に使って騙すことが多いらしい。
相手への挑発なのだ、この行為は。
黒崎は恋愛もしたことがない初心な男に見えるのだろう。
年齢は一応私より上らしいが、見た目は幼く見える。
私を含めて周囲にいる女よりは綺麗だし、きっと女装なんてさぞお似合いだろうと考えるときがある。
だからこそ、そこを上手く漬け込まれて駒にされてしまう可能性があるのだ。
私を犯し、私の声を聞かせて相手にはっきりと立派な男であることが証明できる。
悔しかった。
涙が止まらない。止めようとも思わない。
この男の前で泣かない日なんかない。
「…最低だわ…」
「…なんとでも」
「だけど私はもっと最低よ…」
「…かもな…」
彼なりの謝罪なのかどうか知らないが、私の頬を撫でる手が優しい。
「…吉田」
「…なによ」
「…初体験で中に出したらアウトらしいぜ?」
「……そうね…」
「……責任取ってやろうか?」
「…取る気ないくせに…」
「俺、ちょっとだけ本気なんだけど」
「…嘘よ」
「…エイプリルフールは終わってますよ、吉田さん。もう五月だよ?」
「……あなたなんて一年エイプリルフールじゃない」
「お。その例え、うまいね」
会話の後、黒崎は本当に中に出した。
有言実行であいつをグーで殴ったのは言うまでもない。