翡翠
彼の笑顔に恐怖を感じたらそれが合図。
私がもし豚じゃなかったら彼に食べられなかったのだろうか。
そんなことを呑気に思いながらも私の体はベッドへと沈ませられていく。
「あき、ら…。」
「んー?」
私の胸に顔を埋めたままで彼は答える。
「…気持ち、良いの…?」
私の聞きたいことを彼はすぐ理解して笑って言った。
「気持ち良いっちゃ〜。野ブタのおっぱい、ふかふかなのね〜。これ枕にして寝たい〜。」
そう言って彼は私の胸の中で頭を動かす。
彼のさらさらとした髪が動いているだけで私の体は熱を持って震えた。
そんな微妙な変化にさえも彼は気づいて、私の方を上目遣いで一瞬だけ見てそして胸の下の方に口づける。
「このまま寝ても良いけど勿体ないのよ。せっかく野ブタと二人っきりなんだから。」
彼はそう喜んで言うけどあの日以来、私は彼と二人になるのが恐かった。
彼は私と二人になればたとえ校舎内であろうともすぐに行為を始める。
そしてお決まりのように言うのだ。
『 愛してる 』
その言葉が私を強く束縛する。その言葉を放つ瞬間だけ、彼がどうしようもないくらい愛しくなってしまう。
「野ブタ。」
「ん…。」
「駄目だっちゃよ?俺とー、エッチしてる間は俺のことしか考えちゃだめ。」
『 本当は行為最中以外でも日常全て、いや君の脳から足先まで全て俺で埋めて欲しい 』
彼が罰だと言って私の胸の突起を軽く噛む。
「やっ…。」
「痛かったー?ごめんねぇ、野ブタ。」
そう言って彼は今度は舐め上げる。その舌を這う動きが厭らしくて直視出来ない私は自分の手で視界を塞ぐ。
「信子。」
私の名前を呼ぶ彼の声に私は寒気を感じた。
おそるおそる視界を塞いでいた手を放すと、そこにはあの日の彼の冷たい顔があった。
その冷たい顔に私は逆らえない。
「どうして俺を見てくれないの?」
「そ、それは…。」
「どうしても俺を見れないって言うなら…。」
彼の続きの言葉が何なのか予想がつかない。ただ恐怖心だけが湧き上がり続けていた。
私の頬を彼の手が包む。
彼は極上の甘い笑みで私を見る。
私は彼から目を逸らすことができない、いや逸らせないんだ。
彼の綺麗な瞳が恐怖で震えている私を映す。
私が彼をしっかり見ていることを彼が確認すると、彼の口がゆっくりと開く。
「 本当にどこかに閉じ込めちゃうから。 」
その言葉に私の瞼は大きく上がり、そして全身が凍りついたように動けなくなる。
私の頬を包んでいた手の片手の指先が厭らしく私の体の線をなぞる。
下まで辿り着いた指は私の秘部の入り口を優しく撫でる。
凍りついた体で唯一そこだけが熱を持っていた。
「…っ。」
傷がつかないように、爪を立てないようにしながら彼は秘部の中へと指を滑らせるように入れる。
「…あっ…。」
自分でも想像がつかない高い声が出れば彼は嬉しそうに笑う。
笑いながら中に入れた指を動かせばまた私から声が上がり、そしてまた彼は幸せそうに笑って。
「野ブタァ…気持ち良いんだ?俺、嬉しいっちゃ〜…。」
「わ、わか…んないっ……あっ…!?」
私の答えを待たずに彼は指を奥まで入れて掻き回す。
少し強引になった指の動きに痛みを感じたが、きっとそれも一瞬だけだと私は思った。
気づけば彼の顔は私の下半身の側で、しかも秘部のところにあり、私は彼が何をしようとしているのか分からなかったけれど
そんなところに顔を近づけては汚いって言って彼の頭に手を添えて離そうした。
やんわりと自分の頭に添えられた私の手を除けて、顔を上げればまた甘い笑顔を浮べていた。
彼のこの甘い笑顔を見る度、私の心中に恐怖心が生まれていく。
「俺、前も言ったのよーん…野ブタにぃ、汚いところなんてないってさ。」
だからここも綺麗、と言って既に濡れていたそこを線を描くように舌を這わせる。
私の背中が反って、そのせいで舌が奥まで入ってしまう。
彼は苦しむ様子もなく、むしろ舌が入るところまで入れて愛撫する。
「…や、めて…きた…っ…な…!」
「…ん…野ブタ…ちょっと…痛い。」
私が必死で止めようと彼の頭を強く押しても彼は退く気配はなかった。
「…あっ…。」
愛撫することを止めたかと思えば今度は秘部の皮膚を吸い上げる。
秘部の中で小さく膨らんだ豆を親指で押しながらまた吸い上げて、そして愛撫の繰り返しだった。
私は途中から止めることより愛撫から押し寄せてくる未知の感覚から逃げることに必死だった。
「い、や…っ…あ…っ…。」
「野ブタ、可愛い…もっと…気持ちよくしてあげる…。」
「だ、め…っ…あっ…!」
親指で押していた小さい膨らみを強く吸い上げられて全身が震えた。
彼は顔を上げて、口元についた液体を指で除き、そのまま口内に含む。
その厭らしさに私は羞恥を感じて、目を強く瞑った。
「…野ブタの甘い…おいしい…。」
美味しい?
彼は味覚までおかしくなってしまったのだろうか。
私はどこまで彼を狂わせてしまったのだろう。
罪悪感が生まれて涙が止まらない。
「野ブタ、そんなに嫌だった…?」
彼が心配そうに私の頬を伝う涙を舐めながら拭き取る。
拭き取られてもまた涙が流れてきりがない。
「…野ブタは泣き虫だね…。」
そう呟いた彼がゆっくり私から離れていくのを感じた。
これで今日はもう終わりなのだろうか…少し物足りなさを感じてしまった。
…何が足りない…?
疑問に思いながらも私は起き上がろうとすれば、彼は私の腕を掴んで自分の胸元へ引き寄せる。
「…あっ…。」
引き寄せられた瞬間、自分の中心に当たる彼の中心が激しく鼓動していることを感じた。
「今度は…一緒に、ね?」
彼は少しだけ私の体を持ち上げた。
私の秘部の中へと自分のモノを擦り付けてそれの入り口を開けようとする。
入り口は先ほどの愛撫で濡れていて、僅かに開かれただけでモノを一気に入れ込んでしまう。
「…あっ…!」
「野ブタ、凄い…。」
この日もどれだけ繋がったか分からない。
私の体には彼がつけた赤い印が散らばっている。
初めて彼と交わった日につけられた首筋の赤い印は日が経っても未だに消えない。
深く心に響いた傷はかすり傷でさえも中々消えないと聞いたことがある。
果たしてこれが心の傷なのかどうかは分からない。
ただあの日は傷ついたことは確か。
だけど今は?
彼と繋がるのは彼を傷つけた原因は自分だから?いつか終わりが来るって思っているから?
でも仮に終わりが来たとしてもそのときに私たちはまた元の関係に戻っているのだろうか。
いや、戻らない気がする。
彼は壊れたままで、私は彼に怯えたままだろう。
そんな状況になるくらいならこうやって抱き合った方が何倍もマシだ。
私は横で眠っている彼の頬にそっと手を伸ばして撫でる。
『 野ブタは綺麗だよ 』
やっぱり貴方は嘘をついているね。
貴方の方が私より綺麗だよ。
ねぇ、どうして私を選んだの。
心を壊すほど愛する価値なんて私にはない。
「………信子。」
気づけば彼の頬に触れていた手に彼の手が添えられていた。
「…お、起こした…?」
「…また泣いてる…。」
「…ご、ごめん…これは…んっ…。」
私が言い訳をする前に彼は私の口を自分のそれで塞ぐ。
何度も顔の角度を変えて重ね合う。
彼の舌が私の口内へ入り込む。私の舌はいつもなら逃げるはずが今日は逃げない。
逃げるどころか彼の舌を求めて自ら絡めようとしている。
「…っ…野ブタ…せっ…極…て、き…なの…。」
お互い呼吸を整え合いながら口づけを続ける。口から唾液が流れても気にすることはなかった。
「……あき、ら……彰…っ…。」
私はただ彼の名を叫ぶように呼び続けた。
「…のぶ…こっ…もっと…もっと…呼んでっ…。」
「んっ…彰…っ…。」
どんな形でも良い。
私をこんなにも求めてくれるなら私も病んでみせよう。
私も貴方を壊すほど愛してみせるよ。
ずっと貴方を見ているから。だから貴方も私以外を見ないで。
「 …好き…。 」