方程式


世の中には科学や非科学も含めて謎が多い。
どちらかというと自分は科学を解くほうが好きだ。
非科学の方に関わっているときっとろくなことはない。
ただでさえ人間という生き物は汚い、と日々感じているのに
わざわざそれをさらに奥深くまで知ろうとは思わない。

なぜ男は女を、女は男を、好きになり、恋というややこしいものに発展していくのか。
理論的ならば解いてみたい気もするがやはりそのためには研究対象となる相手が必要だ。
それを探すのに時間を割くくらいなら今やっている研究を進めるほうが遙かにマシだ。

なのに、うまく進まない。

「…せーんせいー」

非理論的生物が呼んでいる。
どうせまた厄介ごとだろう、と思い、今度こそ無視する。
大体どうして自分は彼女に協力しているのだろうか。
彼女に自分を紹介した男は大学の同僚というよしみで、かつたまたま興味のあるものばかりだったから
協力しただけだ。
なぜ彼女まで手伝う必要がある。
確かに抱え込んでくる事件は結局実に面白いものばかりだが。

自分の本業を互いに忘れてはならない。
自分は学者で、彼女は刑事。

そう区切らせようと何度試したことか。
この実験だけは未だに成功が見えてこない。

よくよく考えてみれば彼女は女だ。自分は男だ。
つまり。

恋についての実験は出来る。

「な、なんですか?」

「いや、こう僕が近づけば君がどう反応するか試してみた」

壁際まで追い詰める。
唇と唇がもう少しで触れ合うくらいの距離まで。

「……逃げないのか」
「…え…」
「逃げないのならばキスをしていい、と了承を得たことにするぞ」
「お、おかまいなく…」
「いいのか、それで」
「え…」

簡単だろう。
好きだ、という一言を言えばあっさりと事は進むというのに。
だから非理論的かつ人間について調査するのは嫌なのだ。

だが目の前にいる人間ならどんな実験でも試したくなる。
理論的でも非理論的でも。