「野ブタ」

何日ぶりだろう。
修二と話すのは。

彰と関係を持ってからプロデュースはずっと止まったままだった。
プロデュースがない限り、彼とは他人なんだ、と思わされた。
助けて欲しいとかそんなの思ってない。
別に彰も悪いことをしているわけじゃない。

だって私は真実を承知して守ってもらっているから。

でも修二と向かい合うと胸が軋む。
罪悪感で溢れて溺れてしまいそうになる。

「しゅ…桐谷く、ん…」
「いいよ、修二で。二人だし」

非常階段で一人食事を取る私の隣に修二は、すとん、と座った。

「…修二、どうしたの?」
「いや、元気してるかなって」
「げ、んきだよ…」
「本当に?」
「…本当に」

はぁ…と修二は私の答えに溜め息をつく。

「お前、このままでいいのか?」
「!」

私の最も恐れていたことはもう既に起きていた。
彼も真実を知っていたのか。
彰が知らせたのか、いや。
きっと彼も私と同じように悟ったのだろう。

「……」
「野ブタ」

私は答えられなかった。
私自身、どうして受け入れたのか、そしてこのままどうしたいのか。
未だに答えは出ていないから。

「…野ブタ、こっち向け」

そう静かに彼は私の顔を自分の方へ向けさせた。

「…生理、来てないだろ」
「…っ!」

かぁ、と顔が赤くなるのがわかった。
きっと普通の女性なら手を出している。
殴っていい場面のはずだ。
どうして彼がそんなことに気づくのだろう。

「ど、うして…わか、るの…」
「まり子が言ってた。お前の顔色がずっと悪いって」

それでどうしてわかるのだろう。
彼女と話したことなんて数回しかないのに。

「…あいつ、ゴムなしでやってるだろ?」
「…っ…」

彰はいつも私の安全日を確認してやっている。
なのに吐き気が止まらないし、生理もここ二ヶ月来ていない。

「安全日なんてものは絶対じゃないんだ」
「………」
「もし、なっていたらどうするんだ?」
「…そのときは」
「育てられるはずないだろう」
「………」
「でもまだ決まったわけじゃない。とにかく、病院に行け」
「…修二」

「あいつのやったことは許せない、だけどな」
「………」

「俺はお前らがちゃんと結ばれて欲しいんだ。だから放っておけない」


「このままでいいはずがない」


「修二…」

彼の言葉に私は一つの決意をした。

告げよう。

私の想いを。

彼をもうこれ以上苦しめたくない。

私は立ち上がった、でも。


「野ブタ!?」


全て遅かった―