01.一目見たその瞬間から

今、考えてみれば一目惚れだったのかもしれない。
彼女が本当の男性だったら触れただけであんなに戸惑うはずがない。
まあ…今になっては本当に男だったとしても好きだったのかもとか考えたりすることもあるけど。
「中津、どうしたんだよ。ほら、移動しようぜ」
「あのさ、瑞稀」
「なんだよ」
「俺、やっべぇくらいお前のことが好きだ」
「…ぶっ、何言い出すんだよ!聞かれてたらどうすんだよ」
「大丈夫だって。別にホモだと思われても俺は平気だぜ!」
「俺は平気じゃない!」


02.その声だけで

「…あっ…」
こうやって聞いてみると彼女はやはり女なのだと確信させられる。
男でもこんな声出せるらしいけどやっぱり女性の声が俺はいい。
「な、かつ…っ…」
限界が近い彼女が精一杯に伸ばしてくる手に俺は自分の手を重ねる。
「あっ…やっ…もうっ…」
「まだ、イくには早く、ねぇ?…もっと、聞か、せろよ…」
「ば、かぁ…っ…」


03.貴方の匂い

「これ、中津のジャージか」
佐野のベッドの上になぜか彼のジャージが置いてあった。
どうして彼のだったのかわかったのかというとジャージの下の方に名前が刺繍してあったからだ。
彼に届けようとそれを手に取ってみたが、ちょっとだけ遊戯心が沸いた。
ジャージを広げてみれば意外と大きくて、一体どれくらいなのだろうかと試しに袖を通してみた。
全然ぶかぶかだった。
袖から手なんて全く見えないし、
もしかしたら自分の体型ならブレザーのジャケットの上からでも着れるんじゃないかと思うくらいだった。
「やっぱ、あいつも男なんだなぁ」
おそらく部活帰りにでも寄ったのだろう。少しだけ汗臭かった。
でも嫌いな匂いじゃない。
「……なんか照れるな」

―部屋の外―

「……何、人の部屋の前で鼻血流してんだよ…お前は」
「…お前はあれを見て何も反応しないというのか」
「あれ?……ああ」
「何、その素っ気無い反応」
「着ているのがお前のジャージじゃなかったらお前と同じ反応していたかもな」
「………俺より凄い反応しそうな気がする」


04.美味しい唇

「瑞稀って意外と食うよな」
「そうかな?まあ女にしては食う方だとは思うけど」
「いや、男だとしても食う方だな」
「そうかな」
「いつぞやかのメガトン級ハンバーガーを食ったという話は嘘かと思ったら、つい先日行った店で本当に食べ切りやがったし」
「伊達にアメリカ育ちじゃねぇもん。あ、中津も食う?」
「いいのか?」
「うん」
「じゃあ、いただきますっと」

「…んっ…って食べるところ間違えてねぇか!?」

「だって食ってるお前の唇の方が美味そうに見えたから」


05.触っちゃダメ

「おーい、瑞稀…ってなんで避けんだよ」
「い、いや…そのっ…わりぃ!」
「どうしたんだよ?」
「えっと…いや、その…ほんとなんでもない…ってああ、脱ぐなよ!」
「…今更かよ。お前、全然平気だったじゃん」
「だ、だけどっ…な、中津…ち、近いっ…マジ、勘弁してくれ!」
「…ほんとお前、変だぞ」
「……わ、わかってるよっ!…でもなんか変にドキドキしちまうんだからしょうがねぇだろ!」
「……マジですか」
「わ、わかったんなら…離れて…って中津っ!」

「わかったら尚更離れられねぇっつーの、このバカ」