1.やわらかな鎖
「今日からお前の場所はここな」
それは監禁とも聞き取れる言葉だった。
でも手足も縛られることもなかったし、何もされなかった。
生活も普段どおりしていいとも言われた。
ただ一つ変わったのは自分の居場所。
私はまだ気づいていなかった。
彼の狂気に。
2.たとえ泣き叫んでも
自分の足間から流れているのは白濁の色をした粘液と赤色の液体。
「相当いてぇもんだって聞いてたけど」
「…近所迷惑じゃない」
「へえ?…俺より外のことを気にしている余裕があったわけか」
そんなわけない。どれだけ痛かったと思うのだ。
泣き叫んで、思いっきり殴ってやりたかった。
「じゃあ、もう一回するか」
冗談じゃない、と叫ぼうと思ったけれどそれ以上に声も上げられないほどの体を貫く痛みの方が上だった。
「まあ、叫んでもやめてやらねぇけど」
3.何されたい?
「…何それ?」
「何ってバイブ」
「どうするの、それ」
「この形見たらすることなんて一つだと思うけどな」
「……」
「それ以外に何がある?」
「…舐める?」
「いいじゃん、それ。やれよ」
「嫌よ!」
4.移り香
「氷柱、最近黒崎さんの匂いがする」
「…私、何もしてないけど」
「そうじゃなくて!…彼本人の匂いがするの」
「もしかしてタバコ?…やだなぁ」
「…もう〜…そうじゃないって言ってるのに〜…」
5.イイ子に待ってろ
「…っ…」
「すげぇ、三本も入った」
暗い室内に響くのは水音。
私の下半身の狭い入口を三本の指が塞いでいる。
何度も上下にそれが蠢いている。
気分も高潮してきて、ああこれがイくということなのかと理解してきた頃、指は抜けていってしまった。
「ど、うして…」
「時間だからな」
立ち上がる彼を見上げれば、彼は苦笑して私の額に口づけた。
「すぐ帰ってくるから。…その後、またたっぷり可愛がってやるよ。
…指以上のもんでな」
6.いっそのこと
縛ってしまえばいい。
だけどそれをしないのは、
あいつが心で俺を縛るから。
だから俺も心で縛りたい。
道具使ったり、滞納の家賃を理由に脅迫やらいくらでも物理的手段はある。
それじゃ、日なんて限られている。
どうせなら、定番の「あなたなしじゃ生きていられない」と言わすくらい縛ってやりたい。
7.君にサヨナラ
もう一週間だろうか。
部屋の主は帰ってこない。
テーブルに置いてある私の部屋の鍵を見た。
私の部屋?
最近、どちらを自分の部屋と呼ぶべきかわからなくなってきた。
本当に帰るべき私の場所はどこだろう。
8.逃がさない
「吉田」
「…黒崎」
「お前、帰る場所間違ってんじゃねぇの?」
「間違ってるのはあなたでしょ。ここは私の部屋なんだから」
「正確には俺が貸している部屋だから事実俺の部屋でもあるんだけどな」
「…うっ」
9.オカエリ
「…そういえば、黒崎」
「なんだよ」
「言うの忘れてた」
「オカエリナサイ」
10.Give me a
break
見た目も性格もそこらにいる女と変わらないというのに、彼女のどこに一体惹かれたのか。
いや、性格はこの現代には少しうざい方か。
どうしてこんな普通の女に俺は狂ってしまうほどになってしまったのか。
体もいたって普通で、ちょっと足が綺麗だなと思うくらいだ。
ああ、でも何回抱いても慣れない反応と声を抑えようとして口を押える手の隙間から零れる吐息とか割と好きだ。
最近気づいたのは閉じた瞼の美しさとか。
日々、彼女は俺の何枚も重ねられた防御壁を壊していく。
最後に残った俺自身という壁も壊して入り込んでくる。
俺ばかりが壊れて、彼女はそのままいる。
それは不公平だろう。
「なんだよ、吉田」
「……その」
「何」
「……もう一回、してもいい?」
ほら、また壊していくんだ。