1.友達は恋人未満か否か

俺と彼女の関係の始まりはなんだろう。
親子?兄妹?
どれに当てはまるのかわからない。

とりあえず知り合い、それは間違いない。

彼女をじっと見つめたところで答えは出てくるわけない。

あ、目が合った。

「どうしたの、智」
「なんでもない」

「あ、そう」

一つはっきりしているのはこのやり取りだけで自分の心は癒されるということだった。

2.(されても構わなかったのに)


珍しく大広間の長机に伏せて眠る自分。
そこに近づいてくるは彼女。

「あ、寝てる…」

彼女は一言発して、それから小声で笑い出した。

(…忙しい奴…)

彼女の気配を感じた地点でもう意識は取り戻し始めているというのに。
彼女がどんな行動に出るのか少し興味があって狸寝入りする自分。

「…悪戯しちゃおうっかな〜」

彼女が楽しそうにいしし、と笑う声が聞こえる。
どうせ定番の落書きとかそんなんだろ―
そう思いながらまた寝ようとしたら髪に柔らかい感触が当たった。

「…こういうのってほっぺとか唇にするもんなんだろうけどね」

彼女は苦笑しながら去っていく足音が聞こえた。

(…しまった、表向いておけばよかった…)

3.どうにかなってしまいそうだ

家族としての感情より先に男としての感情を抱いてしまった場合、どうすればいい。
でも彼女は自分のことも他の奴らのことも家族としてしか見てない。

迷っていたらどんどん自分以外の奴らも彼女に恋をしている。

どうすればいい。
またひきこもる?今度は彼女と一緒に?

でもあいつらとも一緒にいたい。

友情?愛情?

ああ、どうしたらいい!

4.君と僕との適切な距離

あいつが前を進んで、俺はその後ろを歩く。
それが心地良い。

「ねえ、智!」
「なんだよ」
「横歩いてほしいんだけど…なんか落ち着かない」
「そうか?俺はこれで落ち着くけど」
「あたしは落ち着かない」

そう、彼女は頬を膨らませて可愛く怒るけどこればかりは譲れない。

「まあ、慣れろよ」

そう言って彼女の額に自分の額を当てた。


5.恋愛対象というのは

「なあ、翔」
「なに」

「恋ってどんな感じ?」
「なんだ、急に…ああ、もしかして」

「勘違いすんなよ、俺はただ聞きたかったから聞いてるだけだ。別に相手なんかいない」
「はいはい…。そうだな、相手を見るだけで嬉しくなったり手とか触れ合っただけでどきどきしてしまうのが一般例だな」
「ふうん…」

「相手に対してイライラしたりすることもある。だがそれは相手に自分の方へ向いてほしいってことだ」
「………」

「さて、智くん」
「な、なんだよ」

「君は今挙げた例でどれに当てはまったかな」
「……っ」

(全部とは言えるわけないだろ…)


6.甘酸っぱいセンチメンタル

こっち向け。
こっち向け。
こっち向け。
こっち…。

「………」

「あんな殺気込めて視線送るなら後ろから思いっきりいけばいいのにな」
「全くだ」

7.友情の有効期限

一体、どこまでが友情なんだろう。

手を繋ぐ。
キスをする。
二人で一つのベッドで寝る。

「なあ、これって友情?」
「馬鹿!それ、もう友情じゃねえよ!」


8.越えたい、だけど変わりたくない(千里→?)

ちょっとだけ夢に見た家族が手に入った。
それだけで満足しているはずなのに。

だけど彼の背中を見る度、違う感情が溢れ出そうになる。
彼と並んで歩いているだけで穏やかなこの気持ち。
同時に激しく渦巻く女の性。

彼より少しだけ後ろを歩くように歩調を合わせる。
後ろから彼の服の裾をちょっとだけ掴んだ。

「なに?」
「なんでもない」

今の自分にはこれが精一杯。


9.戻れない場所を想う(風)

「風?」

駄目だとわかっているはずなのに。
この女の目的なんてわかりきったことなのに。

今更、あの家に戻りたいと思わないはずだったのに―


10.すべてが変わるよ、明日から

もう少し家族でいたかった。
だけど自覚してしまったらもう無理なんだ。

(どんな顔して会えばいいのだろう)

おやすみ、と言葉を交わした後、彼女は自分をまた呼び止めた。
でもすぐになんでもない、と言って去っていってしまった。

(どうしてあのとき、あんなに顔が赤かったのだろう)

明日になったらその原因がわかるだろうか―