1.どこにもいけないよ

「智?」
「……」
「ねえ、智ってば」
「一人に、してくれねぇか」
「…わかった」
「なんでいんだよ」
「あんたの一人になりたいは一人になりたくないって意味で取ってるから」
「…かなわねぇな」

2.頼むから逃げないでって、そんな風に泣かないで

皆、幸せになってもらいたい。
そう願っていてもそんな願いを叶えることが無理なことも実行しようという勇気がないということもわかっていた。
だけどせめて目の前にいる二人の少年くらい幸せに出来るのではないだろうかと思う。
でもそれも単なる過信でしかなくて。
二人はどこか一線を引いている。
それは私に対してだけでもなく、彼ら同士もそうだし周囲に対してもそうだ。
本当は気づいて欲しいんだとは思う。
私がそうであったように。
「野ブタ?」
「どうした」
「……」
卑怯だとわかっていても言葉にすることは苦手だから。
だから、泣くような目で彼らを見つめて、逃げないで私を見てと訴えることしか出来なかった。

3.君の熱が足りない

「あのさ、中津」
「やだ」
「佐野がそろそろ練習から戻ってくると思うんだけど」
「俺の部屋に行かせればいいだろ」
「…あのなぁ…」
「だって足りねぇんだもん」

4.どうしてこんな痛み俺に教えたんだ

届かないことなんてわかりきっている。
彼に見せる笑顔と自分に見せる笑顔は微妙に違うから。
だけど自分はずるい奴で、そして弱いから。
だから彼女の優しさにつけこんで彼女にすがりつく。
「すいません…」
「いいんですよ、たまには休んでください」
ほら、こうして微笑んでなすがままにさせてくれるから。
彼女を離すまいと抱き締める手の力を強めてしまうんだ。

5.肩を寄せ合い夜明けを待とう

「いよいよ明日ですね」
「…はい。四年って意外と長いですね」
「…そうですね」
「恨んでいますか?私のこと」
「どうして」
「時々、思うんです。あのまま二人を死なせていれば二人は何も背負わないままでよかったのかもしれないって」
「…それは、ないと思います。たとえそれが俺とあの人の願いだったとしても一度犯した罪は死んでも消えないんです。
 それに俺たちは死んだら生きていたとき以上に後悔することがあるから」
「後悔?」
「はい。しおりさんのことです」
「……私が?」
「あなたは俺にもあの人にも全力で生きろって言ってくれたじゃないですか。
 その言葉は俺にとってもあの人にとっても僅かな希望だったんです」
「…芹沢さん」

「だから俺もあの人もこれから精一杯今以上に生きなきゃいけないんですよ。
 それが…犠牲になった人たちへの償いになると俺は信じていますから」
「……そうですね」

「……あの人には特に生きてもらわないとこのままじゃ勝ち逃げされてしまうし」
「…え?」
「いえ、なんでもないです」