truth
もう正しいのか悪いのかそんなことわかりきっている。
自分が正義なのか悪なのかも。
自分が天使なのか悪魔なのかも。
偽りの姉と会う時間が唯一、人間としていられた。
彼女と出会うまでは。
彼女と出会ってからは光が見え始めた。
計画を実行しようとする前に彼女に会えたら全て変わったかもしれない。
あの男を許すことが出来たかもしれない。
しかし全てが遅すぎた。
自分を見つけたときの彼女の笑顔、
自分のせいで傷ついてしまった子供を癒す彼女の笑顔、
自分にカードが送られてきて心配しにこちらに走ってきた彼女の悲しそうな顔、
自分の偽りの誕生日を祝ってくれた彼女の笑顔、
誕生日プレゼントの手作りのクッキーを渡す彼女の照れた顔。
全てが愛おしい。
もし。
自分を心配して来た彼女を冷たく追い返したあと、後悔して追いかけようと扉を開いたらどうしていただろう。
きっと閉じ込めた。
全てを忘れて。
彼女と共に生きよう、と。
自分以外に見ないで欲しい。
自分以外に触れないで欲しい。
自分以外に笑わないで欲しい
そして。
今日。
自分はやはり弱き者だと思い知らされた。
これ以上、彼女と関わってはいけないと背を向けた瞬間に腕を掴まれたときから。
与えられるはずことが許されない温もりが全身に伝わる。
そして恐ろしいほどの快楽の言葉。
「私じゃ成瀬さんの天使にはなれませんか!?」
ああ…どうしてもっと早く出会えなかったのだろう。
もう戻れない。
「ご、ごめんなさい…私、気が動転しちゃって…」
彼女が離れていく。
どうか、離れないで。
そばにいて。
ああ、もう戻れない。
そして、とうとう彼女を抱きしめてしまった。
彼女の温もりを自分の体に染み込ませる。
こんなことが出来るのはきっと最初で最後。
彼女は事実に気づくだろう。
だから最初で最後。
なら…。
「成瀬、さん…?…んっ…」
深く口づける。
もう何もかも最初で最後だから。
「んっ…んんっ…」
激しい口づけを交わした後、もう後悔したくないから彼女を自分の住む部屋へ連れ込んだ。
そしてまたキスを交わす。
何もかも最初で最後だから。
最後だからせめて。
せめて、自分に幸せを与えてくれたことを感じ取って欲しい。
そう想いを込めて、彼女の肌にひとつひとつ、自分を刻んでいく。
「んっ…あっ…」
ああ、天使がいる。
本物の天使。
暗い室内でも輝く彼女の白い肌に赤い印が生まれていく。
「…な、るせさ、ん…っ…」
「…っ…」
許して欲しいとは言わない。
だけどもう戻れないんだ。
だから後悔したくない。
広いベッドの隣には彼女が全てを曝け出して眠っている。
気を失っている間にカフェに運ぼう。
そして今度こそ、もう会えない。
彼女は自分に触れたことによって事実に気づいて、そしてあの男に言うだろう。
そして全てが終わる。
だから彼女を抱いた。
眠る彼女の頬を撫でて、そして柔らかい唇に自分の唇を重ねる。
「…ん…」
キスを受け止めてくれる彼女の恍惚とした表情。
本当はもっと見たかった。
このまま閉じ込めて自分のものにしてしまうのもかまわないかもしれない。
そう思いながら、眠る彼女の耳元で最後の告白をした。
「しおりさん、僕はあなたを愛していました」