誰の温もりもいらない。

どうせ自分に関わるとろくなことがない。
そして他人に関わってもろくなことはない。
それは黒の世界に入り込む前から変わらなかった。

そう思っていたのに突然現れたお節介女のせいで全部狂った。

今まで真っ黒で何もないノイズだらけの世界にぽつんといたはずなのにあの女の存在が現れた途端、
地面が渦を巻くように乱れだす。それは迷いというやつなのだろうか。

その渦は俺の心なのかそれとも彼女の心なのか。



「黒崎」

「俺がやっていることって犯罪だよな」

「え?」

「でもまぁ今更、罪を重ねたって何も問題もねぇよな」


迷い、といってももう俺はほとんど答えが出ている気がした。
その予想した答えというやつが彼女の手首を拘束した手錠だと思われる。
どうせなら足にもつけてやろうかと思ったが色々不便が出るのでやめた。

「…なぁ、神志名ってお前に気があるのかな」
「なっ…あるわけないでしょう。あの人が私に近づくのはあなたのことで…」
「じゃあどうして俺のことを聞くのにお前もあいつも笑っていたんだ?」
「それはただの雑談よ。あの人も私が検事を目指していることを知っているから。
 少し現場のことを公開出来る程度に教えてもらっただけ」
「ふぅん…」

おそらく嘘ではないだろう。
でも話の内容なんてどうでもよかった。
それよりもあの空間に俺以外の人と一緒にいることに不快を感じた。
あの空間は俺と彼女だけのものなのに。

「ねえ、黒崎。これ外して」
「どうして?」

自分にしてはずいぶんと甘い声が出た。気持ち悪いと思った。
だからなのか吉川の警戒心が増加してしまったのは。

「外したら逃げるだろ、お前」
「く、ろさき?」

吉川の首筋へ手を伸ばせば、肩が派手に震えていた。
もしここで彼女を殺せば永遠は手に入る。
だけど生きてなくちゃ何も意味がない。

代わりに首筋へ噛みつけば彼女が悲鳴を上げた。
その声量が予想以上に大きかったからパンツにつけたベルトを外してそれで彼女の口を塞いだ。

唇を首筋から離せば、小さな血粒が浮き出ていた。
その小さな傷跡に舌を這わせば彼女の背中が反り上がる。

「敏感なんだな」

くっと笑い立てながら言うと吉川はきっと睨んで来た。

「こういう状況でそう睨まれるとかえって燃えるな」
「…んっ!」

おそらく蹴り上げようとしていた右足を掴み、そのまま足首に舌を這わす。
それから足指一本ずつにも舌を這わせば彼女が声にならない声で悲鳴を上げた。

彼女の顔を覗けば、涙を流しながらもまだ抵抗心を失っていないようだった。

それでいい。

そうでなくちゃこれから行う行為は何も意味がない。




お前は俺が好きだと言うけれど俺はお前のことは好きじゃないよ。
好きなんて可愛い言葉で表現出来ないから。

このまま閉じ込めてやればどんなに楽か。
自分だけのものにしてやることなんて簡単だよ。

だけど。

お前がお前でなくちゃ意味がないんだ。

だからお前を閉じ込めない代わりにお前の体内に俺を閉じ込めることにしたよ。


絶望の彼方 安息の肩
飛び降りる片足が宙へと舞う瞬間 女神の指があらわれ
怖いモノみたさ 手を引くのはアナタ―



UZU-MAKI